洪水発生の予測は、宇宙から。
近年、毎年のように発生している大雨による水害。温暖化等の影響で、集中豪雨や台風が日本全国で頻発し、平和な日常に大きな影響を及ぼしています。
洪水の発生によって時に人命や家などの財産が一瞬のうちに奪われます。常に自然災害と隣合わせの中で生かされているのです。
ただ我々人間は地球という箱の中で生きています。このため、自然災害を完全に抹消することはできません。地球の中で生きる以上、自然災害とともに生きていかなくてはいけないのです。
といいつつも、自然災害が発生する度に人命や財産を奪われていたのでは安心して生活することができません。
現代では、
- 天気予報
- 災害情報を発信するメディア
- SNS
などの普及によって、事前に大雨情報や台風情報をキャッチでき、自然災害の状況を自宅でも知ることができるようになりました。また、近年多くの人が利用するようになったSNSでは、最新の情報をリアルタイムで多くの人が受け取ることができます。
テクノロジーの進化によって、私たちは自然災害とともに生きることが以前よりも可能になってきました。
今回は、テクノロジーの進化のひとつで、JAXAと東京大学の共同研究グループが発表した日本中の河川をいつでも誰でもモニタリングできる「Today's Earth」についてお話します。
Today's Earth【TE】とは?
Today's Earthとは、JAXAが東京大学と共同で開発した陸上の水循環シミュレーションシステムです。日本中の河川の流量や氾濫域の予測結果をモリタリングすることができます。
このシミュレーションシステムでは、気象状況に応じて地表面や河川の状態を数値計算から導き出し、結果をデータや画像として提供しています。
気象状況等のデータは、衛星観測データを活用しており、土壌の水分量や地表面気温、河川の流量・水位などを推定しています。
これによって、河川流量や土壌水分量などの水に関するデータが可視化され、地上に降った降雨がいつどの程度集まってどれほどの規模の被害をもたらすのか、予測・監視することが可能になりました。
Today's Earthのシステムについて
Today's Earthでは、河川の流量や氾濫面積割合といった解析情報をWebサイト上で一般公開していますが、どのような流れでシステム解析が行われているのでしょうか。
下の図はToday's Earthのサイトに掲載されていた河川氾濫情報等を推定するまでの流れを表したものです。
Today's Earthでは、宇宙の衛星観測データを利用して算出された様々な気象データを融合させることで、陸面過程モデルを作り、地表面の流出や地下流出などが計算によって導き出されます。
これらの計算結果をもとに、河川氾濫モデルが作られ、河川の流量や氾濫面積割合といった河川に関連する予測結果が導き出されているのです。
Today's Earth-Global
Today's Earth-Globalでは、全世界の土壌水分量や河川流量、氾濫面積割合などの情報が取得できます。
データの解像度としては、緯度経度0.5度格子(約50km格子)で、河川については0.25度格子(約25km格子)となっています。
Today's Earth-Globalのリンクはこちら↓
https://www.eorc.jaxa.jp/water/map/index_j.html?area=global
モニタリングできるデータ
一般公開されているモニタリング可能なデータは、降水量や気温、積雪量に加え、河川流量や浸水深、氾濫面積割合などの河川に関連するものです。
もう少し拡大してみるとこんな感じ。
基本的に世界の情報を取得できるToday's Earth-Globalでは、約50km格子のデータとなっているため、日本列島を拡大してみるとその解像度はそこまで高くなく大まかな情報であることがわかります。
河川については、約25km格子なので、50km格子よりはもう少し詳細なデータを確認することができます。
TR-Japan
Today's Earth-Globalでは日本の細かな領域を確認することができません。このため、より解像度を高くしたToday's Earth-Japanが開発され、2019年11月29日より一般公開されています。
Today's Earth-Japanでは、日本国土を対象としておりその解像度は緯度経度1/60度格子(約1km格子)まで改善されました。
Today's Earth-Japanのリンクはこちら↓
https://www.eorc.jaxa.jp/water/map/index_j.html?area=japan
日本のシミュレーションデータ
日本を対象としたシミュレーションデータによって、より解像度の高い情報を入手することができるようになりました。
北陸圏を拡大してみると、Today's Earth-Globalよりもより詳細なデータを確認することができます。
2019年10月の台風19号
2019年10月12日に日本列島に上陸した台風19号。
各地で河川が氾濫・決壊し、多くの土地が浸水するなど10万棟以上の家屋被害が確認。100名以上の死者を出し、平成以降の台風被害で最悪規模となりました。
実際にToday's Earthも、この台風19号上陸時に活用され、約91%の堤防決壊地点で高いリスク予測をすることができたと報告されています。
一方で、高いリスクを予測した76%の地点では実際の決壊は起こらなかったそうです。
高いリスクを予測し空振りに終わる分には安全側なのでそこまで深刻に捉える必要はないでしょう。しかし、空振りが続くと情報への信頼度が低くなり、避難を呼びかけたときに実際に避難する人が少なくなるといった危険があります。
このため、より高度で正確な予測が今後求められるようになってくるでしょう。
最後に。
人命や財産を自然災害から守る研究は重点を置くべき課題です。早めに河川の氾濫が予測できれば、事前に避難を呼びかけたり避難所の準備をしたり実際に避難をしたりすることができます。
自然災害と共存していくためにも、宇宙からの衛星データを活用し、より精度の高い解析データを素早く伝えていくことの必要性を改めて感じました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。また次回お会いしましょう。