日本橋の上空を走る首都高速道路は、都心部の渋滞解消を目的として、1964年の東京オリンピック前に建設され、1963年開通から50年以上が経過しました。
こちらの写真は、日本橋の上空に首都高を建設している当時の写真です。1964年のオリンピックを成功させ、第二次世界大戦後の経済成長期に突入するためにも不可欠なビッグプロジェクトでした。
現在では、1日約10万台の自動車が走行する主要道路となりました。ただし、交通量の多さと半世紀以上の経過年数が相まって構造物自体の損傷が激しくなっています。
構造物を造る以上、老朽化は避けられません。下の写真にあるように、日本橋上空の首都高にもき裂やひび割れがみられるようになってきました。適宜老朽化を遅らせるための補修が行われていますが、あくまで応急処置です。
小さな損傷や供用年数が短い構造物であれば簡単な補修等で応急的な対応行います。しかし、今回のように今後長期的な使用を考えていくと新設という選択もあり、今回は「大規模更新・修繕」に踏み切った形です。
日本橋上空の首都高はどこにいくの?
日本橋上空の首都高は、今回の大規模更新・修繕計画によって再整備されることが決定しました。これに伴い、日本橋川に建設され日本橋上空を通る首都高が撤去される事になりました。
日本橋上空の首都高速道路が撤去されるのかと考えると、日本橋付近の景観も大きく変わりそうですね。
ただ、撤去したはいいものの、今まで日本橋上空を走行していた自動車はどこを通行するの?と不思議に思うのではないでしょうか。
首都高が無くなると日本橋の上空が開放されるため景観的には良いのかもしれませんが、1日約10万台の交通量がある主要道路を完全に無くすわけにはいいません。代替道路が必要となります。
今回の大規模更新・修繕事業では、日本橋上空の老朽化した首都高を撤去する代わりに、日本橋の地下に道路を整備することが計画されています。
半世紀以上日本橋上空を走行していた自動車が、日本橋の地下を走行するようになるなんて、なんだか信じられません。
【事業概要】首都高速道路の日本橋区間地下化事業
首都高速道路の日本橋区間地下化事業の概要を簡単にお話します。
本事業では、都心環状線(千代田区内神田〜中央区日本橋まで)の事業延長約1.8kmのうち、約1.1kmが地下トンネルとして整備されます。
千代田区側では鎌倉橋付近で接続し、JR線の地下を首都高が横断します。一方、中央区側では鎧橋付近で接続し、江戸橋の地下を首都高が横断します。
地下道路は、日本橋川の下(江戸橋・日本橋・西河岸橋・一石橋・常磐橋・旧常盤橋・新常盤橋)を横断する計画です。
地下ルートのイメージ
今回の地下化事業では、千代田区側の神田橋JCTから中央区側の江戸橋JCTまでを地下ルートで整備します。
このため、上空を走る既設の首都高は神田橋JCTから江戸橋JCTの間が撤去対象になります。
接続部は、神田橋JCT側は八重洲線を活用してトンネルと接続し、江戸橋JCT側は高架(向島線)と地下ルートをつなぐ予定です。
下の縦断図をみると、日本橋川や地下鉄などを避けるような位置に地下トンネル設置が計画されていることがわかります。
また、車道幅員は上空の現況と地下道路とも3.25mで同じですが、路肩が0.5mから0.75mと1.25mに広がったことでドライバーの空間的余裕が生まれるようになっています。
地下構造物が複雑に入り組む東京の地下。高度な技術が要求される高難易度の工事
今回の事業区間には地下鉄や埋設物等が複雑に入り込んでおり、地下化をすすめる上で高度な技術が要求されます。
工事期間中も地上では普段どおりの日常が流れており、陥没等地下での事故は大きな社会問題となるため細心の注意が必要です。
本事業区間の地下には、上図のように地下鉄浅草線・銀座線・半蔵門線やJR線、高速道路の基礎、地下埋設物が複雑に入り組んでいます。
地下の新しい道路を整備する工事
今回地下化される約1.1kmのトンネル工事では、
- シールドトンネル工事
- 開削トンネル工事
- 擁壁・掘割工事
- 高架工事
が予定されており、2035年完成を目途に複数工事を進めていく予定です。(上空の既設首都高撤去工事は2040年完了予定)
橋脚基礎を移設する「河川内工事」も
上記に加えて、日本橋付近では既設の橋脚が地下のトンネル施工時に干渉することから、既設の橋脚位置を変更するため新たな橋脚を設置し、既設橋脚を撤去する河川内工事も実施されます。
2040年の生まれ変わる日本橋のイメージ
日本橋や日本橋川の上空を通っていた首都高が完全撤去される2040年。
生まれ変わる日本橋のイメージ図を見てみましょう。
上空が開けることで開放感があるイメージとなり、1963年開通前の景色が日本橋に戻ります。
完成までのスケジュール
事業の歩みを振り返ってみると、2014年に日本橋区間の大規模更新事業が開始し、2017年11月から2018年7月までの間、国土交通省・東京都・中央区・首都高速道路株式会社で構成される「首都高日本橋地下化検討会」が実施されました。
その後、2019年2月に都市計画素案の説明会が執り行われ、2020年4月に都市計画の事業認可がおりています。
2022年1月現在では、地下化に向けた出入口の撤去工事や地質調査等が進められています。予定では2035年までに日本橋川の下を横断する地下ルートが完成し、その後日本橋上空を走る首都高の撤去作業が行われます。
都市環状線「呉服橋」「江戸橋」の出入口廃止
地下トンネルの工事に先立ち、地下トンネルの工事を施工しやすくするため将来的に廃止となる出入口を先行して撤去する工事が施工されます。
これに伴い、2021年5月10日(月)午前0時から「呉服橋」と「江戸橋」の出入口が廃止され利用できなくなりました。
実際に江戸橋出口を見に行きました。
ちなみに、奥に見える首都高は江戸橋上空を走る首都高で、今回の地下化によって撤去される予定です。
近づいてみると、江戸橋出口は閉鎖され中に入れないような状況でした。
江戸橋上空の首都高
江戸橋上空の首都高も日本橋同様、今回の地下化事業によって撤去が予定されています。この風景も2040年には見れなくなるんですね。
首都高は地下トンネルとなり上空には青空が広がるのでしょうか。
日本橋区間はこれから20年の間で大きく景色を変えていきます。どんな景色が見られるのか、ワクワクしながら気長に待ちたいと思います。