今回は、「最低賃金」について考えていきます。
本ブログの流れは以下のとおり。
- 都道府県別の最低賃金は?
- 賃金はもっと上げるべき?
- 1)海外と比較すると賃金上昇率が極端に低い
- 2)賃金をもっと上げて消費を促す必要がある
- 3)今後納税額が上がっていく流れは止められない
- 結論:もっと賃金を上げてお金の流れを促そう
厚労省は8月13日に「令和3年度地域別最低賃金」を発表し、最低賃金の全国平均が前年度比28円増の930円になりました。
今回の28円増は、1978年度以降最大の引き上げ幅です。加えて、初めて47都道府県で最低賃金が800円を超えました。
もっと賃金を上げてほしいところですが、いいニュースですね。
コロナ禍における企業の不透明な経営状況が続く中での最低賃金の大幅増。我々労働者にとっては明るい話題となりました。
都道府県別の最低賃金は?
都道府県別で最低賃金を見ると、昨年度の最低賃金が最も低かったのは、秋田県、鳥取県、島根県、高知県、佐賀県、大分県、沖縄県の792円。でしたが、今年度は28円増。高知県、沖縄県の820円が最も低い最低賃金となりました。
最も高い最低賃金は、1位が東京都で1,041円、続いて2位が神奈川の1,040円、3位が大阪府の992円となっています。
令和元年度から令和3年度までの最低賃金の推移グラフを参考までに。皆さんが住んでいる地域の最低賃金はいくらになったでしょうか?
都道府県名 | 令和3年度 最低賃金時間額 | 令和2年度 最低賃金時間額 |
北海道 | 889円 | 861円 |
青森 | 822円 | 793円 |
岩手 | 821円 | 793円 |
宮城 | 853円 | 825円 |
秋田 | 822円 | 792円 |
山形 | 822円 | 793円 |
福島 | 828円 | 800円 |
茨城 | 879円 | 851円 |
栃木 | 882円 | 854円 |
群馬 | 865円 | 837円 |
埼玉 | 956円 | 928円 |
千葉 | 953円 | 925円 |
東京 | 1,041円 | 1,013円 |
神奈川 | 1,040円 | 1,012円 |
新潟 | 859円 | 831円 |
富山 | 877円 | 849円 |
石川 | 880円 | 833円 |
福井 | 858円 | 830円 |
山梨 | 866円 | 838円 |
長野 | 877円 | 849円 |
岐阜 | 880円 | 852円 |
静岡 | 913円 | 885円 |
愛知 | 955円 | 927円 |
三重 | 902円 | 874円 |
滋賀 | 896円 | 868円 |
京都 | 937円 | 909円 |
大阪 | 992円 | 964円 |
兵庫 | 928円 | 900円 |
奈良 | 866円 | 838円 |
和歌山 | 859円 | 831円 |
鳥取 | 821円 | 792円 |
島根 | 824円 | 792円 |
岡山 | 862円 | 834円 |
広島 | 899円 | 871円 |
山口 | 857円 | 829円 |
徳島 | 824円 | 796円 |
香川 | 848円 | 820円 |
愛媛 | 821円 | 793円 |
高知 | 820円 | 792円 |
福岡 | 870円 | 842円 |
佐賀 | 821円 | 792円 |
長崎 | 821円 | 793円 |
熊本 | 821円 | 793円 |
大分 | 822円 | 792円 |
宮崎 | 821円 | 793円 |
鹿児島 | 821円 | 793円 |
沖縄 | 820円 | 792円 |
全国加重平均額 | 930円 | 902円 |
最低賃金はもっと上げるべき?
コロナ禍において、今年度の最低賃金が過去最大の上げ幅で上昇したことは良い流れだと思います。ただ、個人的にはもっと最低賃金は上げるべきだと考えています。その理由は、3つあります。
- 1)海外と比較すると賃金上昇率が極端に低い
- 2)賃金をもっと上げて消費を促す必要がある
- 3)今後納税額が上がっていく流れは止められない
1)海外と比較すると賃金上昇率が極端に低い
下のグラフは、1995年から2016年までの賃金推移です。
1997年を100としたとき、スウェーデン、オーストラリア、フランス、イギリス、デンマーク、ドイツ、アメリカの賃金は年々上昇している一方、日本の賃金は減少の一途を辿っています。上記7か国をみると、スウェーデンが138.4と最も上昇しており、上昇率最下位のアメリカでも115.3と上昇しています。
そんな中、日本の賃金は1997年と比較して89.7と低下し続けているんです。2016年のデータと古いですが、日本の賃金が大幅に増えている実感がないことを考えると、より一層賃金上昇を押し上げていく必要があると感じています。
2)賃金をもっと上げて消費を促す必要がある
日本は、緩やかなデフレの中にいます。デフレとは物の価値が下落している状況をいいます。一般的に、デフレは景気後退といわれ、日本を含め諸外国では経済成長を図る上で年間数%の物価上昇(インフレ)を目指して金融政策等をおこなっています。
現在の日本はデフレの状況下で物の価値が下がっています。物の価値が下がれば消費者は安く商品を購入できるという良い側面を挙げがちですが、商品が安いと商品を販売する企業の売上が伸びません。企業の売上が伸びないと設備投資に回すお金がなく企業の拡大が難しくなります。同時に売上から我々労働者の人件費も支払われているわけですから、売上が伸びないことには経営者側も支出の大きな割合を占める人件費(給与)を増やすわけがありません。
となれば、少ない給与で安い物を買い、企業も儲からず勤め先の売上が伸びないから給与も上がらない。そしてまたその安い給与から安い物を買うという負のスパイラルが永続します。
一筋縄でいかないことは百も承知ですが、どこかのタイミングで商品の価値を高めて値段を上げていく必要があると考えています。ただ、値上げだけだと消費者は強烈な拒否感情を抱きます。値上げによって売上が減少するリスクは非常に高い。
だからこそ、強制的に最低賃金を上げて消費者の消費行動を促し、高い商品を購入できる状況をつくりだすことが必要だと考えています。
3)今後納税額が上がっていく流れは止められない
コロナ禍における特別定額給付金10万円支給や休業支援金、感染拡大防止協力金など、財源を切り崩してでもどうにかコロナ禍を乗り越えようと政策を進めてきてます。
例えば、国民1人につき10万円が支給された「特別定額給付金」では、12兆8,000億円超の予算が計上されています。(総務省HPより)
また、令和2年度に使用された新型コロナウイルス感染症対策予備費では3回にわたる補正予算の編成により9兆6,500億円が計上され、そのうち9兆1,421億円がコロナ対策費として使用されています。
以下は、財務省HPを参考に、令和2年度の新型コロナウイルス感染症対策予備費の使用実績先と使用金額を一部抜粋したものです。
- 学生支援緊急給付金:531億円
- 医療用マスク・ガウン等の優先配布:1,680億円
- 持続化給付金:9,150億円
- ワクチン確保:6,714億円超
- 医療提供体制の確保:1兆1,946億円
- 雇用調整助成金の特例措置:4,391億円
- ひとり親世帯臨時特別給付金:737億円
- 子育て世帯生活支援特別給付金:2,175億円
- 新型コロナウイルス感染症対策休業給付金:294億円
- 新型コロナウイルス対応地方創生臨時交付金:3兆3,792億円
令和3年9月時点でもコロナ収束の見通しが立っていません。生活苦を強いられている人が今後も増大していく情勢下においてコロナ関連の給付金が増大していくのは仕方のないことでしょう。
一方で、コロナ収束後の流れを考えると、国民一人一人の税金回収額は増大することが予想されます。お金をばらまいた回収期間が発生するということです。
お金を刷り続ければいいのですが、まぁそうもいかないでしょうから今後増税の流れは止められないでしょう。
結論:もっと賃金を上げてお金の流れを促そう
今回は、「最低賃金」について考えてきました。
令和3年度の地域別最低賃金は全国平均が前年度比28円増の930円と1978年度以降最大の引き上げ幅になりました。初めて47都道府県で最低賃金が800円超となっています。
一方で、諸外国と比較すると日本の賃金はマイナス成長を続けています。各国の賃金は上がる中、日本の賃金は低下の一途です。
私はもっと賃金を上げるべきだと考えます。もちろん、賃金を上げることは企業の財布を圧迫することに繋がります。それでも、賃金を上げて商品を高く買ってもらう基盤を早急につくっていかないと今後の成長がまったくもって見込めません。
- 賃金が増える
- 消費者のお財布に余裕ができる
- 企業が商品を値上げする
- 値上げしても売上が落ちないどころか上昇する
- 資金に余裕が生まれて設備投資が加速
- 企業の売上がさらに上がる
- 賃金が増える
お金の流れを循環させこのサイクルを回していくには、もっと賃金を上げていくことが重要です。資本主義、株式会社の構造上、労働者の賃金は上がらないように設計されています。ただ、日本の未来を考えるのならより一層の賃金上昇に声を上げていくべきではないでしょうか。
最後まで読んでいただきありがとうございました。また次回お会いしましょう。