「減給」は謝罪に値するのか。
不祥事が発生すると、組織のトップは説明責任を問われます。
責任の所在や今後の対応など、過去から未来にかけて様々な説明を真摯に繰り返し行っていく必要があります。
慣習化していた組織的な欠陥を洗い出し、なぜ今回のような不祥事が発生したのか公正な事後検証が求められます。
不祥事の発生が個人の問題なのか、組織の問題なのか。組織的な悪しき風習によるものなのか。今後の取り組み次第で取り除くことができるものなのか。第三者委員会などの外部支援が必要なのか。
不祥事発生後の対応は多岐にわたります。
「謝罪=減給」に違和感
そんな中、不祥事発生の責任を取る手段として「減給」の選択に私は異常な違和感を感じています。
不祥事が発生した事実は変わりません。不祥事によって不利益を被った被害者がいる事実も変わりません。
その事実に対して、組織のトップが「謝罪」をすることは百歩譲って理解できます(謝罪よりむしろ事実説明をしてほしいのが本音ですが)。
謝罪の姿勢を見せるためなのかなんだかわかりませんが、組織のトップが自分の給与を減らすことで謝罪に置き換えるその感覚が気持ち悪くてなりません。
不祥事を起こしてしまった事実に対しては、組織のトップとしての責任が問われても仕方ないでしょう。ただし、「責任を取る」行為が「手取りを減らす」こととイコールになる感覚がよくわからないのです。
不祥事の根本的解決に向けた「初期対応」が急務では?
不祥事が発生した時、最も重要なのは「初期対応」ではないでしょうか。
繰り返しになりますが、不祥事が起きた事実は変わりません。不祥事が発生した後に、不祥事の発生を長時間悔やんでもその事実は変えようがありません。不祥事は誰しもが起こしたくて起こしているものではないですよね。
だからこそ、不祥事発生時には根本的解決に向けた「初期対応」が重要になります。現時点でわかっている不祥事の内容を早期に組織内で汲み上げ、断片的情報でも正確に伝えていくことが重要です。
不祥事発生時は、やるべきことが多岐にわたりますが、加えて素早く迅速な「初期対応」が要求されます。初期対応の出来によって、世の中の反応は大きく変わりますから。
だとすれば、不祥事発生後やるべき仕事は「初期対応」に全力を注ぐこと。自らの責任を緩和するための「減給」や世論を落ち着かせるための「減給」は不要ではないでしょうか。根本ではないですよね。
謝罪の手段として「減給」を選択するトップを見ていると、その組織の中に片足だけ突っ込んでひとりだけ安全地帯から戦況を眺めているように私は感じてしまいます。
給与は増額していい。結果を。
不祥事を起こしたトップは給与を増やしてでもいいから「不祥事を排除する」結果を出すことが重要ではないかと私は考えます。結論、結果です。
「世論を先に鎮めたい」、その考えは戦略としてよくわかります。
世論が大きくなると、その不祥事に対して多くの注目が集まってしまい、不祥事対応がスムーズに進まなくなる懸念もあるでしょう。が、その裏には「自分の給与を減らせば、世論が許してくれる」というよこしまな考えがあるような気がします。
瞬間的な減給で、不祥事を鎮圧し乗り切れれば、その後多くの目にされされず事細かに調べ上げられることはない、ということを知っているかのように。
話題に登ったときは多くの人が注目します。しかし、話題が過ぎ去った後は無関心になる。そんな世の中の性質を確実に捉えている側面だけ見れば皮肉を込めて戦略家ですね。
【具体策】給与は+1ヶ月分増額で2ヶ月後に結果を報告する
もし自分の会社や組織、部下が不祥事を起こした時、自分ならどうするか考えてみましょう。いつなんどき、そのような状況に直面するかわかりません。
外部から「不祥事起こしたんだから謝れ!」「仕事してない奴は給料もらうな!」と叫ぶことは簡単です。ただ、安全地帯から戦況を眺めてガヤを入れるのではなく、現場に立つイメージで窮地に陥った時どう行動するか自分ごととしてイメージしてみましょう。
私が考えた具体策は、「給与を+1ヶ月増額して、2ヶ月後に不祥事対応の結果を報告する」というものです。
「給与を+1ヶ月増額します」と宣言した瞬間に炎上してしまいそうですが、世論の注目度を高めつつ、今後2ヶ月で不祥事をなくす「覚悟」を公に示します。
この方法はイチかバチかの賭けになるかもしれません。ただ、現状の地位にしがみついている人にはできない行動です。もしかすると不祥事対応に懸ける意気込みを感じてくれる人が一人はいるかもしれません。
実力もない、窮地での判断力に欠ける、結果も出せないのであればトップの器がないということ。短命の事実と向き合うのも時間の問題なので、潮時だと決断する覚悟と潔さも必要ではないでしょうか。
私はそう思います。
皆さんはどう考えますか?
最後まで読んでいただきありがとうございました。また次回お会いしましょう。