令和4年1月10日月曜の日経新聞で、地方公務員に関する気になるニュースがあったのでご紹介します。
引用元:地方公務員に共通資格 政府検討、自治体間転籍しやすく
「共通資格」の導入で地方公務員が他の自治体に転籍しやすくなる
現在、総務省内の研究会で地方公務員の雇用や働き方に関する制度改革の議論が行われいます。
その議論の中では、「共通資格」を導入することで地方公務員が他の自治体に転籍しやすくなる仕組みが検討されているそうです。
本検討内容は今年の夏に中間報告がまとめられ、政府内で制度案がまとまれば2023年にも制度変更に着手するスケジュールで動いています。
【導入背景】公務員試験の仕組みに問題あり。
引用記事にも書かれていましたが、共通資格の導入が検討されている背景として、公務員試験の仕組みに大きな問題があります。
それが、「自治体ごとに公務員試験の内容が異なり、自治体間の転職ができない」というものです。
その状況を改善し、「自治体間で人材流動性を柔軟にする」ことが導入の背景にあります。
公務員試験とは、公務員になるために避けては通れない試験のことで、民間でいう就活と同じ位置づけです。公務員試験は、国・都道府県・区市町村で大きく分けられ、希望する自治体を選択して試験を受けます。基本的に各自治体ごとのルールに従って試験がとり行われ、複数受験していても試験日が被った場合は1つに絞る必要があります。このため、「公務員試験に合格した」といっても国なのか都道府県なのか区市町村なのか、さらに細分化して都道府県や市区町村の中でもどこなのかによって全く異なります。
例えば、国の試験に合格したからといって、地元の都道府県の職員に異動することはできません。あくまで試験に合格した国の職員として働くことになります。同様に、区市町村の試験に合格したからといって、国の職員になることもできません。同じく試験に合格した区市町村の職員として公務員生活を送ることになります。
出向という形で、国や都道府県、区市町村を跨いで数年間の人事交流はよく行われますが、あくまで公務員試験に合格した自治体の職員として働くことになります。
この仕組みによって、一度公務員試験に合格し公務員として働き出したとしても、家族の転勤等によって他の地域に引っ越す場合、その自治体を退職しなくてはいけません。引越し先で公務員として働きたいと思っても、自治体ごとによって公務員試験が異なるため、また一から試験の受け直しが必要になります。
東京都では「キャリア活用採用選考」として実務経験を要する人材を採用するための試験が行われています。ただ、中途採用も各自治体によって全く色が異なるため、年齢制限や試験内容など自治体によって採用条件は変わります。このため、転勤等の事情で退職を余儀なくされた職員は公務員へ再就職をしない傾向が高いのです。
参考:東京都の公務員採用試験(2021年度版)区分
引っ越し先でも公務員として働けるような仕組みを作り、公務員の人材流動性を確保することで自治体の職員数減少に歯止めをかけることが急務となっています。
「共通資格」の内容は?
共通資格とは、公務員として一定の能力や実績、スキルを証明するものだそうで、行政経験を考慮した試験免除など採用手続きを簡略化する内容が想定されているそうです。
詳細はまだ不明ですが、今夏の中間報告の際に周知があるのかと思われます。
共通資格の導入で、地元へのUターンが加速するか?
今回の共通資格が導入されると、自治体間での人材流動がよりフレキシブルになることが予想されます。これにより、出身地以外で働いている地方公務員が地元に戻る動きが加速するのではないかと考えます。
出身地ではない役所に勤めていたとしても、40年近く働いていると、親の介護や実家の事情により地元に戻る必要が出てくることだってありますよね。そんな地方公務員が「共通資格」をとることで地元の自治体に転職できやすくなるのであれば、この制度を使う職員も多くなるのではないでしょうか。
【未来予測】役所から民間に転職しても役所に再就職できる制度が整備される
少し話は脱線しますが、未来予測をしてみましょう。
今回の「共通資格導入」の話題は、地方自治体から地方自治体の人材流動性を高めることを目的にした制度改革でしたが、今後は民と官の人材流動性を促す制度が進んでいくのではないかと密かに予測しています。
大学卒業後公務員試験を受験し役所で働いていた公務員が、専門技術習得のため民間に転職した場合、通常公務員として再就職するには公務員試験を受け直すことが必要になります。ただ、この民と官の人材流動性を促す制度が始まると、一定の条件をクリアすれば「共通資格」と同様、試験免除などが適用されるようになる。
公務員も人材流動が頻繁になる時代が近い将来やってくるのではないかと思います。
もちろん、情報保護の強化や官民が蜜実になることで収賄等の事件に発展するなど課題は多くありますが、就労人口が減少の一途を辿る日本において悠長なことを言っていられる時代がどこまで続くか甚だ疑問です。
時代は急速に変化しています。様々な制度改革に少しばかし耳を傾け、興味を持つことが世の中を渡り歩く上で最低限の意識なのかもしれません。
最後まで読んでいただきありがとうございました。また次回お会いしましょう。